2009年4月8日水曜日

ブータン旅行3日目




3日目

2日目の夜にして気がついた事がある。
ブータンに来てから、何かが足りないと感じていた。でもそれが何かわからなかった。
良くも悪くも「何かが足りない」のだ。この国には。
最初は人口が少ないから物足りない?とか色々考えたのだが、突然わかった。
この国には、「悪意」がない。
例えばインドや中国にいくと、その土地全体から悶々と人の発する悪意、欲望、嫉妬、人から何かを奪ってでも自分が良くなりたい攻撃心のような「悪の気」の塊が向かってくるのを感じる。それがこの国には無いのだ。個人レベルで見ても、国民全体が発する土地からの気のようなものからも「悪意」が欠けている。
今では日本でも車に鍵をかけていても貴重品が入った鞄を車内に置いていこうとは思わない。ブータンでは平気でそれが出来る。ホテル内でも朝食に出る時にでも貴重品を部屋に置いたままで大丈夫かと考えるのが他のアジアだが、ブータンでは全然気にならない。
仏教の影響なのか、人のものを奪ってまでという考え自体がないような気がする。
あくまで私の個人的感想だが。

さて本題。朝一でKelki 高校を訪問。ブータンでGNHを実践するに当たり、きっと何か特別な教育カリキュラムがあるに違いないと思い込んでいた。高校での時間割などを見せてもらえればと思い、校長先生とお会いした。この高校では高校でも時間割ではなく、シラバスがあった。時間割は校長室には無かったので見れなかったのだか、GNH教育などは特に無いそうだ。
当然海外留学経験者の校長先生にブータンの教育と海外の教育の違いについて聞いてみた。
「ブータンはスプーンフィーディング式なのよ。まだまだ生徒は受け身の姿勢の教育方法で、先生が一方的に話すだけ。段々参加型に移行してるけどね」とのこと。
この高校は、第5代国王殿下の母校でもある。校長先生は当時英語担当だったそうだ。




当時の国王殿下は優秀な生徒で、生徒会長だったそうだ。
ブータンでは学年が上がるにつれ、男子生徒の数が増え、大学進学率は男子生徒の方が多くなるそうだ。女性は専門学校か結婚する場合が多いらしい。女性主権の国で?と思いそのことについてどう思うか聞いてみる。笑いながら、「いいんじゃないの。女性は子供を産んで育てることを選ぶ場合が多いからね。育児も当然男性もするけど女性がした方が上手に出来るし」。GNHの概念は家族とのつながり、一緒に過ごす時間を特に重要視している。
つまり、そういうことなのかと納得した。

余談だが、高校の図書館にシドニー・シェルダンの英語本があったりした。以外とモダン。


次に建設中のRoyal Thimphu Collegeを見学。本当に建設中で、「これから国内でも大学教育が受けられるように準備中なんだな」という程度。

次はキノコセンター。キノコの菌を培養して、農家に配布するらしい。
菌を作る容れものは殆どがビール瓶。担当者の話だと、本当は口の広いブラスチック製の容器の方が詰め易いし、高さもないので菌が早く繁殖する。でもプラスチックは環境に良くないので再利用できるガラス製を使うようにとの指示があるらしい。その場に少しだけあったプラスチック製容器を指して、「JICAがくれました。私も研修で岐阜に数か月行ったことがあります。これはしいたけ、これはマツタケ。。。」とキノコの名前だけ日本語で教えてくれた。巨大マツタケと記念撮影。


次はRoyal university of Bhutan訪問。大学だと思ってたら一つの建物だけ。
担当の方にお話を伺うと、ここはブータンの各地にある専門学校をシステム的に管理するための場所らしい。イメージとしてはリモート教育、リモート管理だ。
この日、ここを訪問した時は体調が最悪だったこともあり、これ以上の記憶が無いので以上。。。

ホテルに早めに戻り、少し休憩。
夕食はJICAの方と一緒に。こちらでの体験談をお聞かせ頂いた。
ブータンのレストランで一番難点なのは、寒いこと。
どのレストランにしますか?と聞かれ、「寒くないところに」と言うと丘の上の夜景がきれいなホテル内のレストランにご案内頂いた。ティンプーの夜景はこんなもの。
実際にブータンで生活した方の視線で見て、ブータンはどうなのか率直な意見を伺う。
「いい」らしい。お話を伺っての内容をまとめてみる。
ブータンのGNHという国家政策のポイントは「全ての国民に平等に。誰も見捨てない」事だと思う。例えば電化。国王殿下が2013年までにブータンの全ての家庭を電化すると仰ったらしい。100%の意味は、「1件も残さず」ということだ。ブータンの農村は特に、家と家の間がものすごく離れている。集落を成してない場合も多い。それを100%電化するというのは並大抵のことではない。日本なら普通は効率とそこにそれを作る意味をはかりにかけて過疎地の数%は「見捨てる」事を選ぶだろう。でもブータンは違う。100%といえば、100%なのだ。
ブータンは水が豊富にあるので水力発電による電気をインドに売っている。ある一定の場所まではこの水力発電の電線を引ける。でもとんでもない所にある1件の為に電線を引くのは。。。となると、ソーラー。それでも電化するらしい。国王殿下がそう仰ったからにはやるしかないのだ。電気局の局長は悲壮感が溢れているとか。。。

「誰も見捨てない」政策の温かさを感じるのは、それが私たち外国人(旅行者も含め)にも適応されるということ。JICAでは年に一度健康診断をしなければいけないらしい。隊員全員の費用は合わせれば数百万になる。当然その為の予算が出ている。他の国では皆当然現地の病院に支払っている。でもブータンでは医療費はただ。だからどんなにお願いしてもお金を受け取ってくれないらしい。我が国のために来てくれているんだから取れないということらしい。すごい。。。
一度、地方で任務にあたっていた隊員の方が大量吐血しながら運ばれてきたらしい。多分胃からの出血だろうが胃カメラが壊れていて使えなかった。とにかく輸血しなければという時に、その方の血液型はAB型と判明。アジアでAB型のストックは少ない。全て使ってもまだ足りない。居合わせた隊員でAB型は2名。それでもまだ足りない。知り合いの政府高官に電話相談すると、「私はAB型だ。今から行く」と自ら450CCをくれ、更に足りないとわかると政府関係者に電話を掛けまくり、10人位がすぐに集まり皆献血してくれたそうだ。
我が国の為に仕事をしてくれて、困っている人がいるから助けるのは当然だというわけだ。
すごい話だ。これが全員各省の重要ポストにいる方々の行動なのだ。優しい国が出来るわけだ。

とはいえ、そんなブータン人にもストレスはあるようだ。
癌、特に消化器系の癌患者がかなり多いらしい。
又、JICAで専属弁護士を雇う際の面接で主に扱っているケース(専門分野)は何かと聞くと、「90%は家庭内暴力」との返事だったとか。
一瞬、「女性が男性に暴力を振るうのか?」と思ったがやはり違うようだ。
女性主権の文化のブータンでは伝統的に家は長女につき、男性は家付きの女性に受け入れられたら結婚成立で、追い出されたら離婚となると聞いている。もちろん今は随分1妻1夫制で書類結婚をするケースも増えているらしいが。この追い出されるに至る過程に暴力があるのかもしれない。

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